ここに“幻の鉄道”が…物産館 「トンネルの駅」
お土産 工芸品 高千穂

以前から気になっていた「トンネルの駅」という名の高千穂の観光物産館。「道の駅」ならわかるけど、なぜトンネル? そして、なぜこんなところに本物のトンネルが!? お話を聞いてみると「幻の鉄道」の存在が…。
一度も電車が走ることのなかったトンネル

高千穂から阿蘇に抜ける国道325号線にある「トンネルの駅」。観光バスの休憩スポットにもなっていますが、まず目に飛び込んでくるのは本物の電車の車体です。2018年に赤からブルーにお色直しをし、ひときわ鮮やかに光っています。
2008年に廃線となった高千穂鉄道のサロンカーが活用されたもの。中は休憩室として利用できます。

さらに熊本方面に行くと、その昔昭和天皇を載せた客車を牽引したという「お召し機」も。機関車の後ろを見てみると閉じられたトンネルもあります。
少し哀愁が漂う鉄道たち……。それもやっぱり、「トンネルの駅」にある大きなトンネルが理由にちがいありません。
ここ、実は明治時代から熱望されていた熊本と宮崎を結ぶ“九州横断鉄道”が作られる予定だったところ。1973(昭和48)年に着工しましたが、熊本・高森町のトンネルを採掘中に地下の水脈を切断し、大出水する事故が起きました。水田が被害にあい、工事は中断。その後のモータリゼーションの波もあり、この鉄道の必要性が問われることに。国鉄民営化の影響などもあったようで、“幻の鉄道”となったのでした。
貫通した1115メートルのトンネルに一度も線路が敷かれることなく、電車が通ることもなく……。トンネル工事に尽力した人、鉄道が走ることを楽しみにしていた人のことを考えると、さびしさを禁じえません。
2000年、地元の焼酎メーカー「神楽酒造」が名乗りを上げ、焼酎を貯蔵する場所として活用することになりました。寝かせられ、商品化された焼酎の試飲ができ、買うこともできる施設が併設され、さらに高千穂だけでなく宮崎の名産品なども販売する物産館となり、現在にいたっています。

トンネルの駅の店長さんの案内でトンネルの中に入ってみました。すると入口の方まで焼酎の甘い香りが漂ってきます。「この香りは『天使のわけまえ』によるものですね」と店長さん。焼酎に限った言葉ではなく、海外では「angel share」といい、樽で熟成がすすむうちに水分やアルコール分が蒸気となって目減りしていく分を“天使が取っていったもの”というのだそうです。だから、天使のわけまえから出た香りというわけです。
トンネルは年間を通して17℃、湿度70%に保たれ、貯蔵樽は1300本。数万本の一升瓶も置かれています。夏は涼しく、冬は暖かさを感じる場所なのです。
ここでしか買えない焼酎「虹香」 琥珀色で芳醇

中に入ってみると、高千穂の名産品だけでなく、宮崎のおみやげ物がたくさん。
そして、トンネルで貯蔵された原酒を材料にした焼酎など、各種焼酎も並べられています。神楽酒造の定番「天孫降臨」「くろうま」のほか、宮崎限定「風門」など芋、麦、米、そば、栗などを原料にした焼酎やリキュールがどれもあなたに試飲してもらうのを待っています!

中でもおすすめは、トンネルで熟成された麦焼酎の原酒を使い、このお店でしか売っていない「虹香」(720ml、2,000円)。琥珀色で香りもウィスキーのように芳醇で焼酎とは思えません。味や香りといった中身だけでなく、パッケージデザインまで店長さんが一貫してプロデュースした商品とのこと。
ラベルには高千穂鉄道とトンネル、店の外にある「天孫降臨の滝」とそこにかかる虹が描かれています。私が行ったときは日陰で見られませんでしたが、滝に太陽の光がそそぐときれいな虹が見えるのだそうです。なんてロマンティック!

焼酎以外では、宮崎産ブルーベリーを使った「ブルーベリージャム」(680円)。ブルーベリーとグラニュー糖だけを原材料にしたものなので、ブルーベリーの粒が入ったソースのような仕上がりで、ヨーグルトやアイスクリームにかけるのがおすすめです。
高千穂の中心地から少し車を走らせ、幻の鉄道と本物のトンネル、限定品のお土産を探しに行ってみませんか?
トンネルの駅
営業時間9時~18時 冬期(12月~2月)は17時30分まで
住所宮崎県西臼杵郡高千穂町大字下野字赤石2221-2
電話番号0982-73-4050
公式サイト http://tonnerunoeki.com/